『田園の詩』NO.53 「二学期を前に」 (1996.9.10)


 田舎の学校では、夏休みの終わる頃になると、新学期に向けて、PTA総出の構内
整備作業が行われます。主に運動場の草刈りと廃品回収をするのですが、中学校と
小学校に息子たちが在学中なので、私たち夫婦は二度も揃って出席しなければなり
ません。

 一ヶ月以上、子供たちが走り回らなかったグラウンドは雑草に覆われています。
その生命力には驚くばかりです。親も子も手作業で雑草を一本一本抜き取ります。

 残暑の厳しい時の作業は大変なので、一部の父母や先生の中から、「除草剤を使
えば、簡単に、しかも完全に草を退治できるのに」という声がでないこともないので
すが、「子供たちが裸足で走り回るグラウンドに除草剤を撒くのは健康上良くない」
という意見が大勢を占め、気配りがされているのはうれしいことです。

 暑い中を汗をかきながら、広いグラウンドにへばりついての草取りは、今は子供
たちにとってはつらい作業かもしれませんが、背後にそんな気配りがあったことが
分かる年齢に達した時、きっと心に残る思い出となることでしょう。


    
     秋も深まると、今度は、学校につきもののイチョウの葉が散って来ます。
      これの掃除も大変。風情はあるのですが…。 (08.11.28写)


 廃品回収は、私たちが帰郷して初めてかかわった十年前に比べると大分変わって
来ました。その頃は、空きビン・古新聞・古着・鉄屑など、沢山なものを集めており、
業者もそれらを全部買い取ってくれました。それが今では、ビンだけしか受取って
もらえません。

 昔は≪チリ紙交換≫屋さんがよく来て、私の学生時代、古新聞や雑誌などを出すと、
トイレットーパーに交換してくれ、貧乏学生にはうれしかった記憶があります。

 廃品回収業界がどのような状況になっているのか、その辺に疎い私には分かりま
せんが、リサクル運動の必要性が説かれ、「資源を大切に」という言葉が叫ばれて
いる現在、昔より後退した感があるのは残念でなりません。

 気持ち良くなった学校に子供たちが通うのも、もうすぐです。夏の終わりを感じ
ます。                         (住職・筆工)

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